第四十三回　恩賞の彼方に

信之「木を伐りすぎて洪水か……身につまされすぎて痛い……」
信繁「兄上、どうなさいました？」
信之「いや今回の井伊谷の話が、我が領地のようで。築城やら豊臣や徳川の天下普請やら燃料やらで、我らも木を伐り出していたからな。それが水害の一因か……」
きり「それにしても勝てば勝ったで大変ね。徳川殿も浜松組と岡�ｱ組の恩賞の配分で頭を悩ませているようだし」
信之「万千代殿がどうして出世していったのかわかるような気がするな。草履番の棚といい、今回の表といい、情報処理能力が高いし、今回の岡�ｱ行きでもわかるように交渉力もある。徳川殿は、自分よりも将来の信康殿のために育てていたようだな。年齢からいえば当然だが」
信繁「でも岡�ｱに信康殿がいてよかったですね。事情もわかって岡�ｱ組の不満を抑えてくれそうですし」
きり「徳川殿も安心ね、よくできた跡取りで、万千代君に自慢していたし」
信之「……お前たち、ほんとうに気づいていないのか？」
きり「え？」
信之「実際に徳川殿の後を継いだのは誰だ？」
信繁「それは秀忠殿……あれ？？」
きり「あら、信康殿は？どうなったの？？」
昌幸「まあそのなんだ、我が武田のお屋形さまと同じようなことが起こるのじゃ」
きり「えええええ!!!」
信繁「今の状況から、どこがどうなってそうなるんですか！！」
昌幸「知らん。わしは沼田攻略で忙しかったんじゃ。まったく、お屋形さまといいあの豆狸といい…どうしてこうなるのか」
信之「浜松の徳川殿と岡�ｱの信康殿、という二頭体制という意味では、上田の父上と沼田の私、という我らとそう変わらないのですが」
昌幸「やはり、わしの出来がよいからじゃの」
信繁「いや、たぶん、兄上の出来の方だと思います……」

信康君の出来の良さ、器量の大きさ、父の家康を理解し慕っている様子が描かれる都度、「脚本、鬼、悪魔！　総員、対閃光、対ショック防御！」と叫んでいる軒でございます。直親は見た目きらきらだったし、政次は「結婚するんだ」だったし、いい加減わかってきたぞ……
嫡男と当主が別の城にいてそれぞれを治めている、という状況は真田家と実は同じなのですが、どうしてこうなる浜松と岡�ｱ。すでにいまから、その種が蒔かれ始めている（ガクブル）