第四十回　天正の草履番

信繁「今回は、万千代殿の草履番務めの回、でしたね」
信之「札をつけたり棚を作ったり、札を貼ったり投げ草履をしたり。才気煥発で創意工夫が旺盛なところは、若い頃の源次郎のようだなあ」
信繁「えへへ」
信之「それに万千代殿は意外と周囲にも恵まれているな。それは確かにつぶれてしまった井伊の子だが、万福殿はよくできた補佐役だし、主の徳川殿は最初から実力で出世する先駆けとしてじっくり育てようとしているようだし、すったもんだあったが、直虎殿も養父の松下殿もそれを見守ろうとなったしな。わが舅殿も励ましていたし、わかりにくいが榊原殿も応援しているようだぞ」
信繁「そこが、認めたくはありませんが、太閤殿下とは大違いで……」
信之「そうだな。太閤とて、治部殿や刑部殿や加藤殿や福島殿を育ててきたはずなんだが。源次郎が出会った頃にはそうではなくなっていた、というのが不幸だな」
きり「その松下さんいい人過ぎません？　今回で並み居るイケメンを押し退けて、『本作で結婚したい男ナンバー１』の称号を獲得しましたよ」
昌幸「うむ。松下のあの兄弟は、まるでわしと弟のようじゃ」
信之「…………父上。叔父上が父上の影となってさまざまに働いてこられたことは事実ですが、あの松下殿とご自分をご一緒にされるのはいかがなものかと。はっきり申し上げますが、中身は真逆ではございませんか」
昌幸「ん？　そうか？」
信繁「それより、兄上と私のようかも。兄上がいらっしゃって真田を守って下さったから私も頑張れました」
信之「はあ。源次郎、おれはあそこまでできた人間ではないぞ。それからな、頑張るといって討ち死にするまで頑張ることはない！　ちょっとそこに直れ、説教だ！」
信繁「うわああ、きり！」
きり「自業自得です」

昌幸おまえ、いくらなんでも、あのいいひとに自分をたとえるのはおまえ、弟はそりゃ兄のためにいろいろ策をめぐらしていましたけどねえ……だがこの自覚ゼロが昌幸クオリティなんだな。
今回はなつさんのひとことで、松下源太郎、常慶兄弟のキャラクターが深まりました。昨年の真田兄弟とかぶった方も多そうですが、昌幸兄弟は兄がああだし、信之信繁兄弟は弟が結構好きなことやってますし……やっぱり松下兄弟のようにはいかないようです。