第十七回　消された種子島

信之「今回は五目並べと種子島であったな」
信繁「種子島は、あんなに簡単に作れるものなのですか」
信之「方久がいっていたように、問題はこの先だ。筒の底をふさぐ仕組みが肝腎なのだ。ここが甘いと火薬の爆発力が前方だけに向かわないからな。つまり、暴発だ」
信繁「なるほど」
昌幸「しかしまあ、買えないなら作ってしまおうとはまた、素っ頓狂なことを考える面白いおなごだの」
信繁「確かに種子島はちょっとした訓練だけで誰でも扱えます。発想は悪くないと思いますが、数が必要です。井伊の財力ではそれを支えるのは無理では」
信之「弾も火薬も必要だからな。そして相変わらず、直虎殿を始め井伊の方々には、自分が他人からどう見られるか、という発想がないな。今川は話せばわかる寿桂尼殿が倒れて氏真殿の代になりつつあるのに。政次殿の頭痛が思いやられる」
きり「それでついにぶち切れて次回告白、かしら？　ところで虎松君はかわいかったなあ」
信之「あの『赤鬼』と称された井伊殿にも、あんな頃があったのだな」
信繁「しかし子育てとは難しいですね。手加減するなといっても、あの子達はみな虎松殿より年上でしょう。当然こうなる」
信之「適度に手加減するほど大人でもないからな。いっそ政次殿に教えさせればいいのではないか。囲碁にしろ五目並べにしろ、井伊の方々には足りない、相手の考えを読む訓練なのだからな」
きり「うちの父のような大人げない大人もおりますが」
昌幸「その点、わしは楽だったな。お前ら二人で放っておけば、勝手に切磋琢磨して育ってくれたからな」
信之「やっぱり」
信繁「兄上も手加減なしでしたよね。結局将棋では一度も勝てませんでした」
信之「お前が定石を覚えず、奇策ばっかり打ってくるからだ」
信繁「でも兄上の手は、先が読めてつまらないんです」
信之「一度でもおれに勝ってから、そういえ」
きり「……ほんと、仲のよろしいことで」

　先が読めても、正統派で攻めてくるお兄ちゃんに勝てないのか信繁！　仲良し兄弟漫才ごちそうさまです！　
　それはともかく。　目の付け所は悪くない直虎ちゃんですが、そろそろ井伊の皆さんには外交というものを覚えていただきたい。政次の胃が溶けそうです。一見憎たらしい「後見を降りられよ」、その本音は「頼むから降りてくれよ〜人集めばかりか種子島まで作ろうとするなんて。しかも俺に気づかれるくらいゆるゆる。俺はな、お前が亀のように死ぬところなんか、絶対見たくないんだよ〜亀にも申しわけが立たないよ〜頼むよ〜」なのであります。ついにぶち切れた政次が直虎ちゃんを駿府に引っ張っていってさて、次回何らかの進展があるようですが。