第六回　初恋の別れ道

信繁「‥‥‥‥」(炬燵に突っ伏している）
信之「大丈夫か、源次郎」
信繁「兄上。私はこれまで策に頼っては数々の失敗もしてきました。母上に叱られたり、おばばさまに助けられたり、阿茶局にしてやられたり、馬印を持ち帰られたり」
信之「……それは、同列に論じていいのか？」
信繁「しかし、だからこそあえて問いたい。直親殿のあれは、策といっていいのですか！？」
信之「いえぬな」
信繁「あんなので『策がある』などといわれては、『策があります』というたびに嫌な予感しかしない、といわれた私の立場は立場は」
信之「落ち着け源次郎」
きり「え？ どこがまずいんですか直親殿の策。源次郎さまにいわれたらわたし」
信繁「ぜっったい言わん！特におまえには！」
信之「どこがって、どこもかしこもだが。そもそも、これはおとわ殿に結婚するかしないかの二択を強いているのではなく、社会的に死ぬか死なないかの二択を強いているのだ」
きり「しゃかいてきにしぬ？」
信之「死んだことにするというのはそういうことだ。おとわ殿は井伊の総領娘ではなくなり、直親殿の隠し妻としてしか生きられなくなる。結局おとわ殿はその選択を拒否した。おとわ殿にとっては、井伊の総領娘として井伊を守ることが最も大事なことであったわけだ。直親殿もいつ戦死するかもしれぬのだからな。我らの伯父上たちのように。だからその気持ちはわかる」
きり「はあ」
信繁「兄上も、総領息子ですからね」
昌幸「源三郎、源次郎、えらいことになった！」
信之「これは父上。イッテQとやらからお戻りでしたか」
昌幸「TVが壊れているぞ」
信繁「ちゃんと映っていますが？」
昌幸「わしの宿敵が、こんなに可愛いはずがない！」
信繁「あ〜。徳川殿だって、赤ん坊の頃は可愛かったと思いますが」
信之「つまり、父上の目には今の徳川殿は可愛く見えている、ということですか。語るに落ちましたね」
昌幸「〜〜〜〜〜〜〜！！！！」

　『策』に、次男坊の己の存在意義をかけてきた信繁君にとっては、亀君のあれ程度で「策がある」などといわれるのは、いろいろなものが許さないようでございます。にしてもあの策はツッコミどころ満載でした。
　そして、二年続けて徳川家康が「癒し枠」になろうとは……まあ癒し枠のままでは済まないでしょうけど、いまのところ、不思議ちゃん家康君とにゃんけいさまが癒しです。１２歳の家康に子役を使わなかったのは、この阿部サダヲさんによる不思議ちゃん雰囲気を出したかったからではないかと思います。