2005/12/18up
大佐のささやかな幸せ
| マスタングがその質問を知ったのは、書店で偶然手に取った婦人雑誌からだった。（女性の扱いに長けた男としては、この手の雑誌のチェックは欠かせないのだ）
そして、気になる少年にしてみよう、と思ったのだった。 「鋼の」 執務室に陣取って、持出禁止の文献にかじりついているエドワードに、マスタングは訊ねた。 「もし、私とアルフォンスが、崖っぷちにぶらさがって助けを求めていて、どちらか一方しか助けられないとしたら、君はどっちを助ける？」 「そりゃアル」 間髪入れずの即答に、マスタングは微妙に落ち込んだが、気を取り直して訊ねた。 「では、私とヒューズなら？」 「そりゃ中佐。グレイシアさんとエリシアちゃんを泣かせたくない」 「で、では、私とホークアイ中尉なら？」 「そりゃ中尉。女の人は助けないと」 「そ、それなら、私とハボックなら？」 「そりゃ少尉。だって、オレが助けないとほんとに落っこちそうだもん」 文献から顔も上げずのこの連打に、マスタングは机にへばりついた。 （鋼の〜） 未処理の書類の上でさめざめしていると、不意に頭上から声がした。 「……だいたいさ、あんたなら、オレが助けなくても自力ではい上がってくるじゃん」 顔を上げると、世にも珍しいにっこり笑ったエドワードの顔があった。 「これ、ありがと。じゃあな」 唖然としているマスタングの頭に読み終えた文献をかぶせると、少年は手を振りながら執務室の外に出ていった。 数分後、執務室に戻ってきたホークアイ中尉は、別人のように書類仕事に燃えている上官に驚いたという。 |
現時点（原作５４話）でへたれている大佐への応援歌。
うちのロイエドは所詮、こういうことなんです。